2018/02/06「2013年 渡英の記録」公開

400年間、謎のまま。世界一有名な劇作家って一体誰なんだ?『もうひとりのシェイクスピア(原題:ANONYMOUS)』

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2016年、没後400年のイベントが目白押しのシェイクスピア!

英国の誇りであり、唯一無二の劇聖。 …それなのに。 別人だったって、本当ですか?
ストーリー:時は16世紀のイングランド、アイルランド女王として君臨していたエリザベス一世が統治していたころのロンドン。サウサンプトン伯ヘンリー・リズリー(ゼイヴィア・サミュエル)に招待されて、芝居を鑑賞しにやって来たオックスフォード伯エドワード・ド・ヴィア(リス・アイファンズ)は、ベン・ジョンソン(セバスチャン・アルメストロ)執筆による作品の素晴らしさに感服していた。しかし、芝居を忌み嫌うエリザベス一世の宰相ウィリアム・セシル(デヴィッド・シューリス)が兵士と共に劇場へと乗り込んできて、芝居を中止するように圧力を掛ける キャスト リス・アイファンズ ヴァネッサ・レッドグレーヴ ジョエリー・リチャードソン デヴィッド・シューリス ゼイヴィア・サミュエル セバスチャン・アルメストロ レイフ・スポール エドワード・ホッグ ジェイミー・キャンベル・バウアー デレク・ジャコビ 他 英題:ANONYMOUS 製作年:2011年 製作国:イギリス/ドイツ 上映時間:2時間9分 出典 CINEMA TODAY

どうも。謎に目がないSinです。

最近、メールアプリの顔文字でシェイクスピアを発見しました。 若者にも大人気!…なんですかね? そんな世界の有名人の正体に迫る『もうひとりのシェイクスピア』。 熱くなりすぎて、長文注意!です!

まずは軽くおさらいから。

ウィリアム・シェイクスピア。 1564年、イングランド中部の商業都市ストラトフォード・アポン・エイヴォン生まれ。 家庭は裕福な革手袋商人だったが、次第にそうお金持ちでもない感じに。 1582年、18歳の頃に8歳上の姉さん女房アン・ハサウェイと結婚。 男女の双子を含む3人の子供に恵まれる(双子のうち男の子は夭折)。 何がどうしてどうなったのか諸説あるも、1592年頃に単身ロンドン進出。 メキメキと頭角を現し、四大悲劇を始めとする戯曲38編を残す。 1613年、49歳で引退し故郷のストラトフォードで晩年を過ごし、1616年に52歳でこの世を去る。 誕生日は正確には不明だが、現在は命日と同じ4月23日とされ、ロンドンにあるグローブ座は毎年この日にオープンする。 ed2 [font size=7]photo by IMDb[/font]

で、謎って?

実はこのシェイクスピア氏、その正体が今も議論されているほどに、謎多き人物なのです。 詳しくはこちら(Wikipedia:シェイクスピア別人説)をご覧いただくとして。 要は、文筆業であるにもかかわらず書簡などが殆ど発見されていないことや、サインも現存するものが非常に少なく、表記や筆跡もてんでバラバラなことが怪しい、と。 片田舎の商人の息子にしては貴族社会や海外の文化について詳しすぎる、知識の分野が多岐にわたりすぎている…などという、ちょっと絶対それ褒めてないよね的な疑惑や、行動の空白期間もいろいろ疑問があるようなのです。

そうなると、当然ながら。

別人説が出てきます。 シェイクスピアと同時期にロンドンで活躍していた哲学者フランシス・ベーコンや、ちょいと時期は外れますが同じ劇作家として名を馳せていたクリストファー・マーロウ。 他にも同様に劇作家であるベン・ジョンソンや、肖像画が似てるというだけでエリザベス1世陛下も名前が上がったりしたそうです(笑)。 で、その中でも大本命とされているのがこの『もうひとりのシェイクスピア』の主人公、第17代オックスフォード伯エドワード・ド・ヴィアなのです。 jamie [font size=7]photo by IMDb[/font]

コスチュームプレイが映えすぎる英国俳優陣!

主人公のエドワードは『アメイジング・スパイダーマン』も『パイレーツ・ロック』も素敵だけど、それより何より『Jの悲劇』の怪演が怖すぎたリス・エヴァンスさん。 同じく若かりしエドワードは、『トワイライト・サーガ』シリーズや『シャドウハンター』の美男子、ジェイミー・キャンベル・バウアーくん。 エリザベス1世には英国3大女王女優のお一人ヴァネッサ・レッドグレイヴさん(後のお二人は、ジュディ・デンチ様とヘレン・ミレン女史…と勝手に決めております)。 他にもルーピン先生ことデヴィッド・シューリスさんや、シェイクスピア芝居の重鎮デレク・ジャコビ卿も! queen2 [font size=7]photo by IMDb[/font]

エリザベス朝への旅の始まり。

冒頭、ブロードウェイの一角でイエローキャブから降り立ち、舞台へ急ぐ一人の俳優。 ギリギリの到着にも拘わらず、スタッフと確認をとるなり即座に定位置で台詞を紡ぎ出す。 その振る舞いの自然さと重厚さ、これぞベテラン中のベテラン、デレク・ジャコビ氏! 現代のNYの車の行き交う雑踏から、瞬時に劇世界へと誘われます。 朗々と語られるシェイクスピアの人生から目を移し次の場面へ転換すると、一気に16世紀のロンドンへ! 余談ですがこの劇場、GoogleMapでお散歩して探してみたらブロードハースト劇場というところでした。 さらに余談ですが、この劇場のお向かいは『『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』で登場したセント・ジェームス劇場で、なんだか嬉しくなりました(笑)。

劇場の魔力。

まるで舞台から飛び出したかのように雨の中世ロンドンを駆け抜けた男が辿り着くのもまた劇場。 いきなり兵士に捕えられ詰問されつつ思い返すは、それからさらに5年前の劇場です。 この作品を通して幾度も登場する“劇場”という空間。 今の私たちが触れている、静かに作品を鑑賞する場所というイメージからはかけ離れています。 生粋のロンドン下町っ子たちが押し寄せ熱狂し、野次を飛ばしたり、ついでに物を投げたり。 舞台と客席も距離が近くて、役者に触れたりもしています。 全身全霊でお芝居を体感し、積極的に楽しみ参加する。 テレビもスマホもない時代の最大の娯楽であるお芝居のその影響力は、今のメディアが敵うものではなかったはずです。 cloud [font size=7]photo by IMDb[/font]

劇作家、エドワード。

主人公はイングランドきっての名家の生まれ。 文才に恵まれ、少年期には自分で書いた戯曲を女王の前で披露したり、さらにはその女王と関係を結んだり。 ある日訪れた芝居小屋で観客の興奮を目の当たりにし、以前から書き溜めていた戯曲を、他の男の名を借りて世に送り出そうとする…。 このエドワード、シェイクスピアの正体かどうかはともかく、実在の人物です。 語学に堪能で渡航歴も豊富、そして貴族文化にも精通している。 デンマークやイタリアなどヨーロッパ各国を舞台に、貴族や王族の生活を描くシェイクスピアの作品を書き得るに足る経歴です。 そして、当時の宰相ウィリアム・セシルとの因縁やその後の姻戚関係は、かの『ハムレット』に近しいものがあるとか。 この作品の中でも、厳格な清教徒であり国民を締め付け管理しようとするウィリアム・セシルと、それに反対するエドワードの姿が細かく描かれていて、緊迫感を伴って物語が加速し始めます。 will [font size=7]photo by IMDb[/font]

即時性と影響力。

宰相ウィリアム・セシルと息子のロバート・セシルは共にイングランドの権力の中心にいた人物ですが、決して国民に慕われていたわけではありませんでした。 非道でも無能でもなかったのですが、その厳しい政策に反対しクーデターを目論む人々もいたのです。 シェイクスピアの名を借りたエドワードもその一人。 民衆を味方につけるために、文字通り一芝居打つことにします。 背中の曲がったイングランド王リチャード3世を殊更に狡猾に残忍に描き、民衆の反感を煽ることで、さらにその反発が同じく生まれつき背中の曲がったロバートに向くよう仕組んだのです。 この時代のお芝居は、現代のワイドショーのように機能していました。 昨日の事件や噂を、今日の舞台のネタにする。 嫌われ者のセレブは格好のネタとなり、その評判でまた人を呼ぶ。 政治的なプロバガンダに利用されることも多い故、取り締まりも厳しくなっていく。 やがて、時代が動き始めるのです。

名前こそ違えど…

ラストシーンは現代のブロードウェイに戻り、語り部であるジャコビ氏がエドワードではなくシェイクスピアのその後を語って幕が降ります。 「バラという花にどんな名前をつけようとも、その香りに変わりはないはずよ。」とジュリエットに語らせたシェイクスピア。 その言葉の通り、彼がどんな名前だったとしても、彼の紡いだ言葉が人を動かすというその事実は変わりません。 400年経った今も、世界のどこかの劇場で彼の言葉が生きている。 そのことが、ただただ素晴らしいと思うのです…。 edward [font size=7]photo by IMDb[/font] さて、次はどの作品の英国に遊びに参りましょうか。 皆様も、良き妄想旅を!