妄想ロンドン会議

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Podcast 第43回を文字起こし:【ネタバレ】この感動を、すでに体験した人にも、まだ見ぬ人にも届けたい! NTL『夜中に犬に起こった奇妙な事件』絶賛レビュー(2)

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この記事は、Miz & SinのPodcast「妄想ロンドン会議」の気ままなおしゃべりの中から、特にアクセスの多かった回をテキストで読めるように文字起こししたものです。ある時は激しく・ある時はゆるくマイペースに語られる、さすらいの女子二人組による本音トークを、収録時の雰囲気そのままにお届けします。
Podcast 第43回を文字起こし:【ネタバレ】この感動を、すでに体験した人にも、まだ見ぬ人にも届けたい! NTL『夜中に犬に起こった奇妙な事件』絶賛レビュー(2)

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父、そして母。それぞれのクリストファーへの思いがヒシヒシと……

Miz お母さんのキャラクターが今まで一回も出て来なかったけれども、お母さんのこんなエピソードがあったって思い返すところで、海でのお母さんとの一幕があるんだよね。

Sin あったね。

Miz お母さんが水着で海に入って行って、「クリストファー、いらっしゃいよ」みたいな。

Sin 「怖くないからおいでー」って。

スクリーンショット 2016-03-05 14.37.49Photo by National Theatre Live

Miz で、「入れない、怖い!」って言うけどお母さんは「ズボン捲って、ちょっとだけでも浅瀬においでよ」って。こんなね、こんなシーンの何が印象的なんって思うかもやけど、これがお母さんがこれまで一生懸命育ててきたけど大変やったんやろうなとか、ダイレクトに伝わってきて。いや、離婚して、言い方悪いけどさ、息子を捨てたわけじゃない。でも、そうせざるを得なかったとか、そこに至るまでの気持ちっていうのを慮ると、もう堪らんわ−! っていう。決してクリストファーのこと愛してないわけじゃないっていう。お父さんはお父さんなりに、お母さんはお母さんなりに、っていうのがめっちゃ! めっちゃくる!

Sin 今、自分をどんどん叩いてはるけど、大丈夫かな(笑)。

Miz それがね、堪らんかったですね、ほんまに。

Sin そこまでに、別にお母さんのことをめっちゃ語ってたわけじゃなくって。

Miz だってうちらも、最初お母さんのことは死んだんやと思って見てたもんね。

Sin むしろ、そんな存在感ないんかな、くらいの。

Miz うんうん。

Sin 軽いちょっとした話に出てくるだけのお母さんが、初めて登場してきたのがその海のシーンで、あれ? って。想像してたのと違う、存在感ないわけじゃなかったって。その、失われたものの存在のでかさに改めて気付かされるし、こんなにキラキラした人だったの! って。

Miz キラキラしてたね。

スクリーンショット 2016-03-05 14.44.31Photo by National Theatre Live

Sin あの、本当に特別な女性って感じの演出ではないし、普通のお母さんやし。演じてはる女優さんも、めちゃめちゃ芝居が上手くってびっくりするねんけど、でも取り立てて……失礼になったらごめんなさい、超綺麗な方とか、スーパーモデルばりのっていうのでは決してなくて。

Miz あのねー、見事にウエストがなかった(笑)。

Sin そうね。40歳くらいかな、年相応の。

Miz そうそう。でもすごくチャーミング。で、その海のシーンの後にね、実はお母さんは生きていたんだってことをクリストファーが知って。お母さんからクリストファー宛に何通も何通も送られていて、でもお父さんが隠していた手紙をクリストファーが見つけて。で、手紙を読んでいる時に、ね、演劇ではよくありますけども、お母さんが登場して、それを読み上げてくれるのね。

Sin 読んでる体で、実際読むのは書いた本人っていう。

Miz まぁよくある演出ですね。

Sin 『ビリー・エリオット』でも観た。

Miz 観ましたね。あれは、亡霊のお母さんね(笑)。

Sin でも手紙やったから。

Miz あれ死んでるからね。それはええけど。そこの読み方が、なんちゅうエモーショナルな読み方や! と思って。穏やかさゼロやったんよね。

Sin うん。

Miz あの、普通……って言ったらおかしいな、よくあるのは。

Sin 「クリストファー、元気にしてますか?」みたいなね、ええ声のね。

Miz ええ声の感じで語りかけて。

Sin 『一休さん』のエンディングの母上様みたいな(笑)。

Miz そんな感じ。って、分かりづらいわ! 「母上様ー お元気ですか♪」ってやつね。

Sin あれ一休やったわ、ごめん。

Miz (笑)一休からの母上様な。え、ちゃうちゃう、母上も答えてくれ……。ま、そんなことどうでもええわ。でね、手紙を読んでいる人っていうのはクリストファーなわけじゃない。

Sin そうね。

Miz 手紙を読んでるクリストファーの中には、このくらいお母さんの声が迫って聞こえとんのかー! っていう、お母さんの勢いがほんまにすごくて。もう手紙から飛び出してくるんちゃうかぐらいの。

Sin (笑)。まぁ飛び出してきてたから。

Miz 力強いし、「あなたに会いたい!」っていうのを包み隠さずに。まぁ文章もそうやし。迸るパッション! そこでももうね、キそうになってね。よく言うやん、「舞台上では泣くな」って。「ほんまに泣いたらあかん」って。役者さんの演技においてね。って言うけど、これはほんまに泣いてるとしか思えないし、ほんまに欲してるとしか思えない、感情がガーンって飛んでくるすごい手紙の朗読やったなって。

Sin 決して朗読ではなかったけどね(笑)。体現になってたけどね。

「犬が殺された。ことを、犯人はお父さんなのに嘘をついていた。で、お父さんは犬を殺した。ってことは僕は殺される!」という、クリストファー的三段論法。

Miz 脚本的にというか、その、自閉症の人の考え方というところにハッと気付かされた部分でもあるんだけどね。クリストファーが今までこの街を出たこともなくて、電車に乗ったこともない。「エスカレーター? それ何?」っていう世界だったのが、「ロンドンに行くしかない」って思ったあのくだりの、あの三段論法みたいなさ、あれすごかったね。あの説得力。

Sin えと……犬が殺された。ことを、犯人はお父さんなのに嘘をついていた。で、お父さんは犬を殺した。ってことは僕を殺すんや! って(笑)。ちょっと待ってちょっと待ってーってなったけど。

Miz でも、それまでにちゃんとクリストファーのことを描いてくれてたから、そういう風にクリストファーが思ってしまっても、「そうだよね、そういう風に思うよね、君なら」って思える、その謎の説得力。

Sin 「犬を殺すから、僕を殺すんだ」ってね。

Miz だからこの家を出なきゃいけないけど、出てどこに行くってなって、「シボーン先生のところか。でも先生は親戚じゃないからダメだ」って。

Sin 「トイレがないからダメだ」とかそういうところもあったよね。

Miz トイレにはこだわりあったね。あと親戚のおじさん家。そこやっけ、トイレがなかったの。

Sin うん。あと、「タバコを吸うから嫌だ」って。

Miz 数々の候補地が却下されていって。

Sin 絶対候補地ちゃうやん! ってところもリストアップされてましたが(笑)。

Miz で、ハッと思いついたのが、お母さん。手紙に書いてあったあのロンドンの住所、あそこに行こう! って思い立つまでが第一幕なんだよね。

舞台床面から次々と現れる線路たち。線路を繋げて繋げて……ついに汽車が走る!

Sin だから第二幕は、そのロンドンへの旅路やね。

Miz そうなんだよね。ただ、この一幕の間中ね、犬が死んでから何が起こったのかっていうのを書いた本をシボーン先生に渡して、先生が読み上げたり「この時あなたはどうしたの?」って聞いたりして進行役をしてくれながら話は進んでいくんだけど。そのシボーン先生と一緒にいる間さ、ずーっとおもちゃの鉄道をね。

Sin あれ、びっくりするよね。まぁまぁ長距離やんな、設置し続けるっていう。あれ、ジオラマ?

Miz 線路をね、ずっと繋げていって。

Sin モノレール! ……じゃないや。プラレールや!

Miz プラレール。トミカ♪ トミカ♪ ……あれ?(笑)

Sin 直線のやつと曲線の線路があって、それを自由に組み合わせて、途中駅舎とかも置けて。ってやつを延々やってるんだよね。

Miz そう。

スクリーンショット 2016-03-05 14.47.34Photo by National Theatre Live

Sin なんか引き出しみたいなところから出してきてはべらーって放り出して、それを全部繋げてっていうので、舞台一周するかせえへんかぐらいは行ってたよね。

Miz あれ、結局一周はせんかったね。

Sin どこかに繋げてはいないけど。

Miz 繋げるのかなぁ、と思って。めちゃ注意してたんやけど。

Sin 繋げる範囲を超えた。

Miz 超えた(笑)。あの舞台は、実はいくつもパカッて開くところがあって、いろんなものがそのパカッて開いたところから出てくる! いろんな小道具がね。そのさっき言ってたお母さんからの手紙もそうだし。

Sin いろいろ出てきてたね。

Miz でもあれ、本当に方眼用紙みたいな舞台って言ったらいいのかな、升目が書いてあって。

Sin そうやな。

Miz あんな何の変哲も無いところで、ここだ! ってピンポイントで蓋開けるのすごいなーと思って。

Sin あれねー、番号振ってあるんですよ。舞台の端っこに、1番から10何番くらいまでブロックで振ってあって。

Miz じゃあ、5の1、とか。

Sin やと思う。あとはもう感覚で。

Miz この辺、みたいな。

Sin しばらく使ってる舞台やったら、そこはもう型がついてたりとか特徴がどんどん出てくるから、それを見てるんやと思う。チョークの跡とかっていう見分け方やろなって。

Miz そうね。

Sin とりあえすナンバリングはしてありました。それなかったら絶対無理なんで。

Miz いや、すごいなーと思って見てて。これどうしてんねんやろって。そんくらい次々と規則性のない場所をパカッと開けては、中から線路とジオラマを取り出して、どんどん並べていって。

Sin 馬とか牛とかまでいたよね。

Miz 農場とかあったね(笑)。木とかもあったりしてね。で、最後にロンドンに行くってなった時に、汽車がボーッ! って走るっていう。

Sin 素敵演出!

Miz あの高まる演出。

Sin 実際、私それウエストエンドで観た時も、ずっと繋げてるってことは分かってたし、その繋げることの感情表現……ちょっと乱暴に置いてみたり、退屈そうに置いてたりっていうことの表現力はすごいなーっと思って観ててんけど。ほんまに汽車が走るって全く思わんくって。ほんまに走るんや、びっくりした! ってなってん。

Miz あれ、初演版では映ってなかっただけなんかな。私達が観たロンドンの劇場……あれ何劇場やっけ?

Sin ギールグッド劇場。

Miz そこで観たヴァージョンにはロンドンアイまであったんだよね。

Sin そうそう!

Miz ロンドンの分かりやすいランドマークのオブジェを最後の方に置いてロンドンになって。で、「ロンドンに行く!」でボーッ!って汽車が走って。

Sin ねー。

一幕ラストは、真のクライマックスに匹敵する盛り上がり!

Miz で、一幕の終わりっていうのは、例えばミュージカルで言うならば、『レ・ミゼラブル』だったら『One Day More』が流れる。で、『ビリー・エリオット』だったら……何? 『Angry Dance』?

Sin うん。

Miz とにかくエモーショナルな歌と踊り。ものすごくわーっとくる。

Sin 次に繋げるための休憩30分を持たすためにね。

Miz で、ある意味、真のクライマックスよりも盛り上がる。

Sin そこでお客さんをウワーって盛り上げてめっちゃ喋らせて、「喉が渇いたから飲み物を」ってならせる戦略のね。

Miz そうやね(笑)。オープニングも大事やけど、この一幕の終わりっていうのの大切さ。

Sin みんなそこで帰っちゃうからね、気に入らなかったら。

Miz ていうところで、踊りもなく歌もない、ってこれストレートプレイやから当たり前やねんけど。だけど、かなり迫るものがあって。で、私はロンドンで観た時に感動して。その汽車が走って、で、お母さんの住所をずっと言い続けるっていう。「今から行くんや」っていう彼の決意とともにね。

Sin 「今から行きます!!」みたいな熱いのは一切なく。

Miz そうそう。でもそういうことだもんね。一言もそういうことは言わずにね。

Sin なかったねー。

Miz 住所をひたすら連呼して、お母さんもそれをステレオで連呼し(笑)。

Sin 電話番号まで言う(笑)。

Miz で、お母さんは「あなたに来て欲しい」っていう気持ち。クリストファーは「今から会いに行く」っていう気持ち。で、汽車が走る。そこだけブワーって煙が出る。……感動。

Sin (笑)。ね、その引っ張る力というか、次どうなるんやろうって思わせるにはあまりにも淡々としたストーリーやねんけど。最初の、ストーリーに馴染んでない頃は何が起こるんやろうなって、そこまで熱くなってなかったのに、いつの間にかボルテージが上がっていってて、こんなに、走る汽車を見ただけで泣きそうになる程にテンションマックスやったんやってことに改めて気付かされて。その演出の巧さにね。

Miz うん。

ナショナル・シアターの実験的な公演を一手に担う!? 女性演出家マリアン・エリオット。

Sin この演出家さんが、実は『戦火の馬』のね、演出もされていたと。

Miz 舞台版のね。

Sin ナショナル・シアターの実験的な公演を一手に担ってはる(笑)。

Miz 秘蔵っ子だね。

Sin だろうねぇ。

Miz 『戦火の馬』も今年のNTLのラインナップに入ってますね。次かな?

Sin いや。まだ決まってない組なんで。

Miz これもまた実験的なねー。なんて説明したらいいんですかね。人形浄瑠璃的な。リアル大きさの馬を浄瑠璃の手法で人々が演じ、もう途中から馬にしか見えない! っていう。見事な、装置とでもいいましょうか、リアルな等身大マペット。

スクリーンショット 2016-03-05 14.49.33Photo by http://www.ntlive.jp/warhorse.html

Sin うん。

Miz 4人くらいの操作師がついて、その馬を本当に生きてるように動かすんだよね。で、人間も乗れるんだよね。

Sin 乗ってたね!

Miz だって、乗らんとね。将校さんとかね。

Sin でも、めっちゃ宙に浮いてたりとかしたやん。

Miz 飛んだりとか。

Sin だから、本当に人力で支えるしかなくて。あれもすごい実験的で、あれが出来るとは誰も考えへんのやないかい、っていうような。それも予告編とかメイキングとかYouTubeとかにあるんでね、見ていただいたら。

Miz あのね、NTLの『フランケンシュタイン』を観に行った時にね。最初にNTLのCMがあったん覚えてると思うけど。その時に『馬』の……。『馬』って呼んだり『犬』って呼んだり(笑)。私たち『戦火の馬』のこと『馬』って呼ぶんですけど。『馬』のCMが流れて。その時に母親と一緒に観てたんやんか。

Sin うん。

Miz でまぁ『フランケンシュタイン』は面白かったってすごい感動しててんけど、母親が「ていうかさ、馬!」って言い出して。

Sin おう。

Miz 私がニューヨークに旅行に行った時にね、リンカーン・センターで『馬』をしんちゃんと一緒に観ましたけれども。その時の興奮をね、母に帰国後伝えてたんです。「あのな、馬が馬やねん! 馬が出てくんねん!」って(笑)。

Sin うちの子おかしなったって思わはるで(笑)。

Miz 「あぁそうやろな、『戦火の馬』やったら馬出てくるわな」って言われて。でも、説明しきれないままに「感動やねん!」とか言っててんけど。でも母親がその一瞬の、何秒かの映像を見ただけで、「馬すごいな! 馬やったな!」って。

Sin あれは、馬です。馬以外の何物でもなくて。人とか透けて見えてんねんけど。

Miz だって人がいるもんね、そこに。

Sin めっちゃおるし、別に隠れようともしてないやん、顔を操作する人とか特にね。堂々と立って普通に操作してんねんけど、もう馬にしか……っていうか馬しか見えない! ってなってくるよね。

Miz 演劇マジックだよね。

Sin すごいー。

<※まさに演劇マジック!「戦火の馬」NTL版トレイラーがこちら↓>

完璧に作りすぎないことで増す「リアル感」。

Miz っていう、演劇のマジックに実験的にチャレンジするのに長けたお人なんですかね、この演出家さん。

Sin あと、原作ものをきちんと愛を持って。

Miz どこをピックアップするかっていうね。

Sin その元々ある原作が何を伝えたいのかっていうことを、きちんと見せる作品作りをしてはるなって。だから、とても好感を持って観れる。

Miz そうだよね。その根幹の部分っていうのが、原作本がどこを大事にしてるのかっていうことを、ちゃんと捉えることができる人なんだなーって。

Sin あとビジュアル的にも非常に美しいものを作られるな、とか。

Miz そうね。

Sin でも本当に『犬』にしても『馬』にしても……って、動物シリーズ(笑)。どっちも語り過ぎないし、見せ過ぎない。最後はちゃんと観客の想像力に委ねるってこともきちんと怠らずにね。

Miz うん。

Sin 全部見せてしまえば簡単なんよね。『戦火の馬』だって、骨組みだけの馬が物語を紡いでいくわけだけど、あれ布で覆ってしまえばもう一つ楽になるはずやねん。機械に頼れるし。それを敢えて見せることで、より想像力で馬に見えてくるというか、見せられるというか。

Miz 不思議だねー。完璧に作りすぎないことで、リアルさが増す。

Sin 今回の『犬』にしても、隠さないものが結構多くて。これから出てくる小道具を、周りに無造作に置いてある、とか。ってことを、普通はしないやん。ネタバレになるし。それも無造作に見えて、きちっと計算したところに置いてあるし、それを手渡す人が見える、とかね。っていうことで、こっちが補ったり遊べる余地を残してくれてるなーって。

Miz うん。

Sin ちょっとした隙やねんけど、そこを埋め過ぎない。でもそれは、自信がないと無理やねんよな。

Miz あー。あとは、観客のことも信用してくれてるんやなっていうのが。あの、「ここまでやってあげてんねんから分かるでしょ」的なこととか……ってこれは私が勝手に穿った見方をしてるだけかもしれないけど。もしくは「ここまででええやろ」みたいな感じでやられることが、たまに、たまにね! 見ていて感じることがあったりするんだけれども。そういうのが一切なくて、ものすごい心を開いてくれてるような気がしましてね。それが嬉しかったです。

Sin リラックスしながら観てるし心の底から楽しんでるねんけど、常に見てる側にも緊張感がある。

Miz そうやねー。

Sin 普通に笑って楽しく観てるだけやねんけど。

Miz そうそう。あの、愉快なシーンいっぱいあるんだよね。

Sin 笑えるね。

Miz めっちゃ笑えるねん。

Sin ネタ仕込んで来よりますわ。

Miz 笑えるし、めっちゃリラックスして観れる。

Sin そのネタの仕込みも、そこで緩ましといて次に締めようとかっていう計算もちゃんとしてはるし、笑いながらもずーっと、見逃してはならないとか、今何が起こっているか全身で感じなければならないっていう緊張感は、観客は持ち続けられるよね。

いよいよ、この舞台の視覚的一番の見せ場。第二幕スタート!

Miz そうやねー。ま、というわけでね! 第二幕ですよ。

Sin そうですね。

Miz まだ第一幕の話してた。

Sin やばいやばい(笑)。

Miz この第二幕の冒頭2〜30分?

Sin 長っ!

Miz 20分くらい? これがまたねー、この作品の一番の視覚的見せ所と言っても過言ではない、いよいよルークくん……じゃないな。ルークは演じてた人や。クリストファーがいよいよお母さんの住むロンドンに、電車を使って旅立つという、このシーンね。

Sin うん!

Miz これが、役者の身体と舞台装置、音と光を使ってものすごく立体的に、クリストファーから見た駅、クリストファーから見た電車っていうのを見せてくれるんですねー。

スクリーンショット 2016-03-05 14.58.54Photo by National Theatre Live

Sin まぁー恐怖の都みたいになってたよね(笑)。

Miz すごかったよね(笑)。

Sin これかぁって。

Miz その、最初の説明でも言ってたけど、自閉症の人はたくさんの情報を処理しきれない、と。

Sin インタビューで答えられてた方は、時の流れがスローになったり早くなったりっていう説明をされてたよね。だから、処理しきれない時には怒濤のごとく流れていくんやろな、って。

Miz そうねー。

Sin あれさ、でも信じられる? キャストをさっき改めて数えてんけどさ、10人なのよ。

Miz 全てで10人? 嘘みたいやね。で、うち一人がクリストファーでしょ?

Sin だから9人でしっちゃかめっちゃかにしてんねんけど、なんか100人くらい人おるんちゃうかなって。

Miz おったねー。通行人とか駅員さんとか警察官とか、みんなそれぞれね。

Sin 酔っ払いとか(笑)。

Miz おったなー。あとカップルとかサラリーマンとか、ロンドンにおる怠惰なインフォメーションの姉ちゃんとか(笑)。

Sin あれ、おるよな! あの姉ちゃん絶対おる!

Miz おるおる! 都会にはおるねん、あれが。っていうのを、全員で回してた。もちろんその中には、御歳何歳かちょっと存じ上げないですけど。

Sin ユナさんな!

Miz 『SHERLOCK』のハドソン夫人を演じられてるユナ・スタッブスさんが、ちゃんとそこに入ってですね、機敏な動きで。

スクリーンショット 2016-03-05 15.00.53photo by http://bit.ly/1sNeb8Y

Sin めっちゃ上手かったよ。

Miz で、役者をみんなで担いで持ち上げたりとか、空中浮遊みたいなことさせてみたり、スピード感を表わすためにみんなで移動させたりっていうシーンも、ユナさんも一緒に一体となってね。

Sin ……75歳? くらいかな、当時。

Miz 75歳?! すごいね。機敏やったよね。

Sin とても軽々と、横になったりすごい速歩きしたり。バックするときにちょっと後ろをピッて振り返ってるのがすごい可愛くて。

Miz 全員でマスゲーム的に動いたりするときもあったから。後ろ振り返ってたんや(笑)。やっぱりちょっとね、安全を確認しながら。

Sin 芝居の体(てい)でチラッチラッて見てはって、めちゃかわいー!って。

Miz 確認してるーってね。そういう冒険のシーンを、この座組みが一丸となってお届けする(笑)、見ごたえたっぷりのシーンがあるんだよね。これ、NTL版だと床だけにしか映像が映らないけど、今のロンドン上演版だと、床と奥と左右、あと天井も少し。

<※2016年現在、ロンドン上映版の「犬」トレイラーがこちら。NTL版と比べると、視覚的トリック倍増↓>

Sin だから、前以外やね。

Miz その5面に映像が投影されていて。で、エスカレーターを降りるシーンでは真正面にエスカレーターの映像がわーって映って。

Sin うん。

Miz で、どうすんのかなーって思ったら、奥の壁からドンってエスカレーターの段が。

Sin 向こうからゴンって押したみたいにね。

Miz ブロックが出てきて。壁をやな、壁をや(笑)、クリストファーが壁に乗って、本当にエスカレーター降りるみたいにしよってね。

Sin あれ、びっくりした。

Miz そんな装置用意してたの? みたいな。

Sin そういう仕掛けを見せ過ぎない……のも、オシャンティーよねー。

Miz オシャンティーやわー。

Sin 粋よねー。

Podcast 第43回を文字起こし:【ネタバレ】この感動を、すでに体験した人にも、まだ見ぬ人にも届けたい! NTL『夜中に犬に起こった奇妙な事件』絶賛レビュー(3)に続く→

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普段はジャパン演劇界の片隅で公演やイベントをプロデュースしたり、デザインしたり、パンを捏ねたり、色々手がける何でも屋さん。小さな頃から洋画が大好きで、ジャニーズアイドルには見向きもせずハリウッドスターを追いかける少女時代を送り、今に至る。『ロード・オブ・ザ・リング』が好き過ぎてNZを訪問したことをきっかけにロケ地巡りに目覚め、『SHERLOCK』のロケ地ロンドンを訪れて以来、英国の虜となる。今注目の俳優は、ヒュー・ジャックマン/ジェイク・ジレンホール/ジャック・ダヴェンポート/コリン・ファース/ベネディクト・カンバーバッチ/タロン・エジャトンなど。ただ今、ロンドンとの心理的距離を縮めるべく英会話を猛勉強中。
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「ハリウッド、なにそれおいしいの?」が合言葉で、ほんの数年前までは知ってる海外俳優はゲイリー・オールドマンとロバート・ダウニー・Jrだけと言ってもいいほど洋画に興味が無かったけれど、友人に誘われうっかり参加したNY旅行をきっかけに洋画沼にハマる。そうこうしているうちにロンドンの魅力に取り憑かれ、足掛け2年で近所のTSUTAYAの英映画ラインナップを制覇。今やAmazon.UKから次々と新作を輸入し楽しむ日々を送っている。今注目の俳優・監督は、ショーン・ハリス/エディ・マーサン/ロリー・キニア/ジュリアン・リンド=タット/トーマス・アルフレッドソン。ロンドン活動に勤しむ一方で、舞台女優の顔も持つ、マイペースで奔放な自由人。