妄想ロンドン会議

今すぐにでもロンドンに飛び立ちたいふたりが、現実には行けない今週のロンドン旅行プランを妄想するWEBサイトです。

Podcast 第35回を文字起こし:【完全ネタバレ注意】ベネディクト・カンバーバッチ『HAMLET(ハムレット)』辛口レビュー(2)

2年前の投稿
By
この記事は、Miz & SinのPodcast「妄想ロンドン会議」の気ままなおしゃべりの中から、特にアクセスの多かった回をテキストで読めるように文字起こししたものです。ある時は激しく・ある時はゆるくマイペースに語られる、さすらいの女子二人組による本音トークを、収録時の雰囲気そのままにお届けします。
Podcast 第35回を文字起こし:【完全ネタバレ注意】ベネディクト・カンバーバッチ『HAMLET(ハムレット)』辛口レビュー(2)

←Podcast 第35回を文字起こし:【完全ネタバレ注意】ベネディクト・カンバーバッチ『HAMLET(ハムレット)』辛口レビュー(1)に戻る

もうびっくりして、これヤバいわと思って、私思わず隣のしんちゃんに「すげぇな」って……。

Sin 私、正直ね、新しさが全くなくて。

Miz 新しさっていう点では皆無だね。

Sin 何やろな。観て、ビジュアルがすごかったんですね。あの、劇場に入った瞬間から。いわゆる緞帳が下りてるのがクリスタルな感じのものに覆われていて、映像が映写されてたりして。ま、注意書きやったりするねんけど。

Miz あれでも、バービカンのデフォルトなの。

Sin あ、あれはデフォルトなんや。

Miz ちょっとだから気ぃ狂ってるってみんな言われてて。

Sin 狂ってんなぁ。

Miz 何やあれあの緞帳、みたいな。

Sin すげぇこれ作ったんやって思ってたけど。

Miz あれデフォルト(笑)。しかも緞帳って普通さ、舞台の面から上にわーんって上がってくやん。これは違うんだよね。

Sin 上下にね。

Miz 上下に分かれていく、みたいな。近未来か! みたいな。『バットマン』に出てきそうな感じよ。バットモービルがね。

Sin 出てきて欲しいわ。

Miz あれね、あの劇場のデフォルトやねん。

Sin あぁ、じゃあそこはいいけど。幕が開いた瞬間に、なんか荘厳なとってもビジュアルの美しい、端正な感じのお城やったじゃない。

Miz そうね。ま、正確に言うと、幕が開いた瞬間は、そのお城隠されてて、ね。

Sin あ、そうか。

Miz 一番最初はベネディクトさんが一人で何かこう、箱をいじってて。

Sin レコードを聴きながら。

Miz そうそう。

Sin 思い出箱を開けてる、みたいなやつやったんかな。

Miz ほんでそこにホレーシオがやって来て、みたいな。

Sin もう記憶が薄くなってます。ごめんなさい!

Miz 二日前(笑)。だから一幕一場がそれで、そこから一幕二場が大広間。もうこれからずっとそのセットでいくわけなんですけども。その、見たことないような精巧な荘厳な作りの、お金掛かってんなー! っていう大広間がね、現れたんだよね。私たちの目の前にね。

Sin あれは美しかったね。

Miz もうびっくりして、これヤバいわと思って、私思わず隣のしんちゃんに「すげぇな」って……。

Sin バシバシ叩かれました。

Miz すげぇなこれ、みたいな。で、完璧だったね、あれは。

Sin ただ、本当に『ハムレット』を演じるに当たっては、一幕一場は城壁のシーンなんだよね。

Miz そうなの。えと、マーセラスとバーナードーという……。

Sin 部下たち。

Miz ズッコケ3人組みたいなね。

Sin そうね(笑)。あの、「幽霊見たってー」「寒いとこやけどおいでー」って。

Miz そう。あの、城壁の、門番じゃないな。なにあれ?

Sin 歩哨に立ってんのかな。

Miz で、そこで、ハムレットのお父さんの幽霊をね、見るっていう。

Sin 延々それね。「マジやってー」「いや、そんなわけないやーん」って。

Miz そんなんちゃうやろ(笑)。「誰だ!」ってやつね。

Sin そうそう。友達同士で喋って、そこから亡霊の激白に繋がるっていうのが、もう本当に戯曲に書かれているファーストシーンなので。

Miz 変えてきたなーっと思ったよね。

Sin それをすっ飛ばして、その次のシーンから入ったんだよね。

Miz そうね。

Sin なので、どうなんの? って。美しいけどどうなんの? っていう。

Miz まぁでも正直ね、あの城壁のシーン、要らんっちゃ要らんねんよ。もう一回あるんだもん、だって。ハムレットがさ、「俺にも見せろ」みたいにやって来てさ。ほんまに父上か、みたいな状況でやって来てさ。そのシーンはあったわけじゃない。

Sin うん。あったね。

Miz あれだけで私は充分やと思ったから、まぁシーンをカットしたことに関しては、「なるほどね、そこカットしたんや。私も実は思ってた、要らんよね」みたいな。なんか、取っ掛かり難いなっていうのがあって。やっぱり最初にハムレット出てきて欲しいねんよね。観客としてはさ。シェイクスピア好きとしてはじゃなくって、一個のエンタテインメントを観る者としては。ちょっとダラダラ長いことあの3人がね、亡霊と喋るのよ。それは要らないなっていうのは前からちょっぴり感じてはいた。

Sin いやでも、私は前情報全く持ってない状態やったから、『ハムレット』をそこまで切り貼りするって発想はあんまりなかったのね。解釈的に摘むとかカットする、不要なセリフを抜くっていうのはみんなよくやってるので、まぁそれはあるかなと思ってんけど。「え! シーンごとカットする?」 っていう衝撃がすごくて。わ、なんかやりよった、すげぇことするぞっていう。

さっきまでハムレットの家やったのに、なんでポローニアスん家で片付けとるねんっていう。

Miz いや、もう私は、ありとは言ったもののね。言ったものの、なしやと思ったよ。……何を言ってるねんな(笑)。

Sin なー。

Miz ちゃうねん。難しいねん、それに関しては。あの、“改善”と“改悪”っていう二つの言葉があってね。もう面白ければいいのよ。ほら、言ってはるやんシェイクスピアさんも。「終わり良ければすべて良し」ってさ。

Sin そうね。

Miz それよ。そこよ。果たしてそれをすることが面白いのかってこと。

Sin あー。それはもう今回の『ハムレット』……もう総括に入ろうとしてるかな、私。

Miz え? 纏める?(笑)

Sin あの、全体的に言えるねんけど、それをすることで何が生まれるのかっていうことがちょっと感じれなかったの。その美しいステージを作り上げて、そこで全てのことが行われるっていうのもすごくいいねんけど、それによって何かが生まれるっていうわけではなかったし。城壁のシーンをカットして後に移してきたことによってすごく劇的な効果が生まれるわけでもなかった。っていうのがちょっと全体的にあって。だから? って。

Miz いや、でも私考えてんよ、なんであの城壁のシーンをカットしてんやろうって。あの後ですごい考えてね、ちょっとこうだったんじゃないかなって結論が一個あって。

Sin ほう。

Miz 一番の問題である、あの大広間のセットね。あれ、一幕二場のファーストインプレッション最高やったやん。どのくらい最高だったかと言うと、もう色彩からそこにいる人のバランスから、衣装から小道具から、そして本火が使われている蝋燭から、全てにおいてもう最高やってん。でも、最高やけど、その最高を一瞬味わった後にじわじわと来る不安ね。このセットどうするつもりなんやろうっていう不安がすごいあって。

Sin そう!

Miz いや、でもここはバービカンだと。で、あのセット、天井まであったやん。

Sin あのね、舞台構造上ありえないことをしておられまして。普通、舞台って天井一面に照明を吊って場面変化をつけるようになっているので、天井って開くはずなのね。それを全部閉じてはったのよね。リアル天井を模したセットで。もう照明を吊るところが一切ない状態で始まって、だからいつか飛ばすよなって思っててん。

Miz 飛ばすっていうのは、舞台用語で上に上げてしまうっていう。うん、私も思ってた。きっとこのバービカンという素晴らしき近代劇場の構造を使って、きっと私たちが見たことのないような転換がされるんだと。この舞台セットがぐるりと回るのか、上に飛んでくのか、下から違うものがゴゴゴゴッと現れるのか。

Sin 人力で全部動かすのか(笑)。

Miz きっとここからや、舞台の転換があるんやって思わんと納得ができないくらい、もうそのセットは大広間以外に使えないセットだったの。

Sin そうやね。肖像画が掛かってて、広々としていて、扉が3、4枚あって。バルコニーまで見えていて。

Miz ただね、その思いは始まって10分くらいで脆くも崩れ去って。なぜかと言うとね、大広間のシーンは王様と王妃様の再婚のお披露目のシーンみたいな感じで……。あ、これちょっともう一個言っとかんとあかんのが、この『ハムレット』の時代設定が全くわかんないってことだけは伝えときたい(笑)。

Sin タイプライターがあって電話も発達しているけれど、ケータイはないのよね?

Miz ないない。で、なんかレコードなんだよね。

Sin 多分60~70年代くらいじゃないかなー?

Miz ちょっと中途半端な近代版『ハムレット』っていう設定なんだけれども。で、大広間のシーンが終わって、次がレアティーズとオフィーリアのシーンになると。

Sin レアティーズが留学先に戻っていくので、「オフィーリア、元気でな」って、「お前の色恋どうなんねや?」っていう。

Miz 「ハムレット様とはどうなってん?」みたいな、そういうのを話すシーンがあるんだけど。あのね、おそらくオフィーリアの部屋かレアティーズの部屋か分からんけども、とりあえずポローニアス家の家や思うねんな。でも、私の目には大広間にしか映ってなくてですね。大広間のでっかーいテーブルがありまして。

Sin 晩餐用のね。

Miz で、どのような転換が行われたかと言うと、厳かに皆様がいなくなり、そして別の扉から一旦いなくなっていたレアティーズとオフィーリアがやってきて、テーブルの端にちょんと居を構えまして、そこで会話を始めまして。するとね、どういうわけかね、イケメンの小人たちが何人も現れて、王と王妃の結婚のお祝い用のね、階段とかに華美に装飾された、なんか分からん植物のアート的な飾りとか……。

Sin イケバナ、みたいなやつね。

Miz そうそう。それとかたくさん並んでいた椅子とか、本火のついてた蝋燭たちね。それをね、小人たちがね、片付け始めたの!

Sin ほんまに小人ちゃいますよ(笑)。

Miz ごめんなさい(笑)。これちょっと、言葉の綾ですかね。黒子?

Sin でも黒子は見えない体(てい)やから違うと思う。あの、召使さんがうわっと出てきて、召使として片付けてはるねんけど、まぁ“モブ”って言われる人たちやね。それが転換要員になりはってて。まぁ召使さんが晩餐会が終わったから片付けてはるっていう感じやねんけど、場所がどこやねんってことになるわけですよ。

Miz そうなんだよね。

Sin さっきまでハムレットの家やったのに、なんでポローニアスん家で片付けとるねんっていう。

Miz だから私、すごい考えてんよ。これはハムレットの家の大広間で、晩餐会が終わって二人が居残ってんのかな、って。

Sin 他人ん家で明け透けに話しすぎやろ(笑)。普通にね、素舞台と呼ばれる何もないところやったら想像力で全てを補うねんけど。

Miz 演劇的ルールがすごく分かりやすくて。素舞台やったら観ている私たちは、「この空間において、全てを観客が想像しろとおっしゃるんですね。分かりました、頑張るよ想像!」っていう風に見れるわけやん。だから何にもないところで「美しい草原だ」って言われたら「草原ね」って思えるし、その3秒後に「家に帰ってきた」って言われても「あ、家ね」っていう風に気持ちを切り替えることができるんだけど。今回は「いや目の前にあるのは大広間ですから!」ってね。

Sin ずっと大広間やったね。

Miz で、これね、一幕の最後まで同じ大広間がずっとそのまま目の前にあり続けて、大広間のまんまで場面転換と芝居が繰り広げられて。つまり、ここは最初は大広間として使ったけども、お前たちの脳内において、次々に変わるシーンにあった景色を想像しろっていうルールやったんやね、結局。

Sin そうね。

Miz びっくりすることにね。

Sin ハムレットの部屋でもあり、王妃の寝室でもあり、廊下でもあり。

Miz ただ、その舞台セットを生かしたままでそういう風に見せることっていうのは、私は本来できたことやと思うの。何を使ってかっていうと、照明。照明を使えば、見せたくないものは消すことができるし、見せたいものは見せることができるし。物の質感やって変えて見せることができる。だけども今回は天井があるから、そんな器用な照明は仕込めてないし。

Sin 本当にその、天井を潰してしまうことのデメリットっていうのがすごかったよね。

Miz そうやね。

Sin だから、ビジュアル的にはすごく美しかったりもするねんけど、照らすべきところを照らせないし、圧倒的に光量が足りないから、ずーっと薄暗い中で延々と芝居が続けられていて。なんか眠ーくなるのよね。

Miz 変わらんかったね。

びっくりした。これもう収録が45分でしょ。まだオープニングでしょ。まだお父さん到着したところやで。

Sin たぶんテーマは自然光やったと思うねん。窓から入る日光と月光。その自然光に見せかけた袖からの明かりと、前からの弱い明かりだけで芝居が進んでいくから。

Miz だから、ありえない場所から照らされてるものがなかったんだよね。こだわったんやと思う。音楽もそうやったし。

Sin 音も、天然の音。

Miz そのこだわりは素晴らしいと思うんだけども、でもそれが逆にお客さんを混乱させてしまう。だったら、そのセットやっておかしいやろってことやん。さっきと同じセットやのに、ここが違う場所ですよっていう風に見せるのは、この芝居のルールどないなっとんねんって。それを一幕中ずっと感じていて。でね、唯一、天井のシャンデリアがね、上下するっていうね(笑)。時々隠れるの。

Sin 大きいシャンデリアがぴよぴよっと出たー、引っ込んだーってね。

Miz でも大きいから! 目立つから。出てくる時とかいなくなる時とか、ゆーっくり動くから。いや、目立つし。「だったら最初から付けんな、このシャンデリア!」とか思っちゃって。

Sin そうね。

Miz で、そんな中でね。戻るよ、話は。私がちょっと思った仮設の話。なんで一幕一場が城壁のシーンじゃなかったかって話。

Sin はいはい。

Miz 私、この芝居、最初にセットが出来てしまったと思うねん。演出家の希望なのか誰が推したのか分からんけど、「このセットでこの大広間のシーンやりたい!」みたいな。

Sin まずそこのアートワークが出来てしまったってことね。

Miz これ見せたい! っていうのがあったんやと思うねん。って考えるとさ、そのセットを二場まで見せられないじゃない。じゃあ城壁のシーンをどこでやるのってなったらさ、セットを隠した前の狭いところでしかできないじゃない。だから城壁のシーンを削らざるを得なかったんじゃないかと思った。

Sin そっちか。なるほどな。

Miz その後にね、もう一回城壁のシーンがあるって話をさっきしたけれども。じゃあ観てない人はみんな今、不思議に思ってると思うねん。じゃあ、その大広間のお家の状態やのに、そのもう一回あるハムレットがお父さんと対峙する城壁のシーンはいったいどこでやったの? って。ちょっとこれ言っておくとね、2階ですわ。2階でやりました。

Sin 2階のバルコニーですわ。

Miz バルコニーっていうかね。家ん中やからね、あれね。

Sin そうか。何て言うんですかあれ、踊り場?(笑)

Miz 踊り場踊り場(笑)。

Sin あの、ね。全く城壁ではないわけですよ。だからセリフがそこでどうなっていたのか分からないので……。

Miz 細かいニュアンス全然分かってないので、だいたい今このシーンやってるなっていうのは分かるんだけども。だから目で見ただけをお伝えすると、大広間があって、そこから下手に向かって延びる階段があります。で、2階の階段のところに次の間に続く廊下的な踊り場的なものがあって、そこでハムレットとホレーシオとマーセラス、バーナードみたいなのが……。

Sin みたいなのって(笑)。たぶんそうやねんけど。

Miz 彼らがお父さんの亡霊を発見するわけですよ。お父さんの亡霊がどこにいたかっていうのも伝えといていい? 亡霊はね、大広間のテーブルがあったとこの真ん中におった。奥の扉からね、歩いてきて。

Sin あのー、普通に家に居るおっさんですわ(笑)。

Miz だからあれね、何も知らん人が見たらね。……ってひょっとしたらほんまに家に出てきたって設定に変えてたかもしれない。

Sin そうなってたらごめんなさいやね。

Miz でも、だとしたら余計に、やっぱり一幕一場の城壁がなくなったのはそういうわけなんかなって思っちゃって。

Sin そうやね。あの、何度も言うんですけど本当にセットは素晴らしくて、奥行きを全部廊下で表現したりとかね。

Miz だってセンターにある大きな扉開けたら奥にまだね、部屋があって。すごい広いお家。

Sin ほぼ使われることはなく、ただその退場の後姿を見せたりとか。

Miz 奥行きを感じさせたりとか。

Sin すごく不穏な空気が向こうから押し寄せてくるみたいな、すごく効果的な使われ方はしてたんですが。もうちょっと別の使い方もあったんじゃないかなって。そんだけ奥行きを殺してまで限定してしまうのはもったいなかったんじゃないかな。それくらい広い舞台だったんで。

Miz だからちょっと持て余してたよね。

Sin その持て余すっていうのが全てにおいて……ってワンシーンワンシーン言ってったらほんまにこれ5時間かかるんで。

Miz びっくりした。これもう収録が45分でしょ。まだオープニングでしょ。まだお父さん到着したところやで。

Sin まだ誰一人死んでないねんな。ってなっていくのでいちいち言わないけど、そういうことがずーっと続いて。なんでやねん、今どこやねんって。

Miz その小道具の使い回し何やねん、とか。細かいところがイライライライラしてきて、「演出家連れてこい!」みたいな状態にね。

Sin いや、来られても困るけど(笑)。

Miz だから、一幕が終わって休憩に入った時に、「ちょっとこれ大丈夫? みんなこれほんまに面白いの?」って……。あ! ひとつ言っとくと、ベネディクト・カンバーバッチさんはすごい頑張ってた!

Sin うん。たぶんそこ。お伝えすべきはそこ。

Miz 頑張ってたよ。

Sin 役者さんはね、みんなすごい良かったと思うのですが。演出面かな、やっぱり。

Miz 演出やね。たぶん好き嫌いっていう部分はあって、それでいくと、もともと嫌いな方向の演出家さんやねんけどもね。

Sin 私たちが意図を感じにくい演出をされていたなっていう。

Miz でもやっぱり、好き嫌いは別にしても、私は嫌いやけど面白いなとか、嫌いやけど人気あるんやろなとかっていうのは往々にしてあって。で今回は、私はこれ嫌いやし、「ちょっとこれみんな面白いと思ってんの?」みたいな。思わず休憩に入って客席を見回してしまったくらいの。

Sin 見回したね。

Miz なんとも納得いかなくて。休憩中はね、ぐるぐる回りながら喋って。

Sin バービカンを散歩する。で日本語なのをいいことに「あれどうなん? どうやったん?」って言いまくるっていうね。

Miz もし日本の方いてはったら、こんな迷惑なことないやろって思う。ごめんなさい、もう気持ちが止められなくて。

Sin もっといいものになりそうな可能性がすごく見えているのに……っていうのもおこがましい話やけど。でももうちょっと何かあるやろってずっと思ってしまっているので。

だから、どんなに涙ながらにベネディクトさんが独白しようが、遠い世界に感じてしまうというか

Miz で、ですよ。驚きの二幕。一幕を超える衝撃が走りましたね。何とね。一幕が終わって二幕が開けると、大広間の屋台骨はそのままで、そのセットにこれでもか! という量の瓦礫という瓦礫がうわーっと積んであって。

Sin 瓦礫というか、土砂だよね。

Miz 土砂か。ほんでですね、ここに裸足でオフィーリアが現れるという。

Sin 痛そうやったな、あれ……。オフィーリアもやし、ガートルードも裸足で。

Miz で、一幕二場の不安と同じものを感じて。二幕の一場では、ハムレットがイギリスに連れて行かれる時にフォーティンブラスがいててちょっとすれ違うっていうシーンで、戦場的なね。

Sin キャンプしてはったね。

Miz 時代背景が分からへんけど。

Sin ま、野営張ってはって。

Miz ていうのを瓦礫で表現してはったんやけども。そのファーストインプレッションたるや素晴らしかったね。照明も美しかったし。

Sin かっこよかったね。あと、何と言うんでしょか、裸火……リアル火、を焚いてキャンプをしているっていう描写があったのね。

Miz でも、やっぱり思うわけですよ。この先の展開知ってるから。ずっと戦場なわけない、ずっとキャンプしてるわけない。

Sin このあと城のシーン死ぬほど出てくるし。

Miz 最後はフェンシングの試合とかするのも知ってる。この土砂、いったいどうするんだろうっていう。

Sin 本当に舞台一杯の土砂なので。

Miz 山になっててね。山を乗り越えないと袖に捌けることができない、そのくらいの量で。これどうするんかな……ひょっとしてどうもしないのかな……って思ってたら。まんまとよ。次のシーンの照明が明るくなってオフィーリアとガートルードのシーン、瓦礫のまんまよ。お家の中に瓦礫がばーんってあるっていう。あれ、何をイメージしてたんやろね。

Sin なんかね、一幕の一番最後に心象風景みたいなのがあってね。クローディアスがたぶんハムレットに対して怒りを露わにした時に、窓という窓からバスッて何かが降り注いでくるっていうのが一幕の幕切れで。それが降り積もったのかなっていう。あれがリアル爆発なのか、嵐が起こったのか戦争が始まったのか、全く分からないんだけど。ただ何かが吹き付けるっていう演出があって。その土砂が積もりに積もって山となって。ま、荒廃した城っていう心象風景なのかもしれないけど。荒れ荒んだ、そしてこれからの運命を予知させるかのような描写になったんかなって思ってんけど。

Miz そうやねん。それがね、あんなに具体的なシーンから始まった一幕があって。で二幕でね、私も自分を納得させたよ。この演出家、イメージ戦法に切り替えたな、と(笑)。この土砂を積み上げることによって抽象にすんねや、この舞台と。それが新しいとこでもあり、「この『ハムレット』いいでしょ?」的なとこでもあるんやと思うねんけど。やっぱりそれが解せないんだよね。

Sin それで現されるプラス面……を補って余りあるマイナス面しか私たちには感じれなくて。

Miz そうやねんよなぁ。そこからのシーンの、土砂のまぁ邪魔なこと(笑)。で、土砂があるから、出てくる人は土砂に干渉されずにはいれないわけ。歩みも遅くなるし、ボロボロ崩れてくるし。捌けて行くにも時間がかかる。でもこれが抽象表現であり心象風景としての表し方であるなら、それが登場人物に干渉してるのはおかしいじゃない。本当は干渉したらいけないじゃない。その矛盾が私の中に渦巻いて。

Sin 本当にリアルにそんな風にあるものだとすれば、なんとかしようとするよね? っていう。

Miz あんなお家の中が荒れ放題になってね。

Sin 荒れ放題っていうか、もう崩壊してるのに住み続けるのはおかしいし、じゃあ従者たちが片付けだすとか、少しでも身の回りのものは取り除いて出してくるとかするべきなのに、それは全く行われていないので、みんなこれが見えてないんかなって。その割に痛そうな音でジャリジャリ滑り降りてるしっていうのが矛盾で。これをやることでこんな素晴らしい効果が生まれましたっていうのは無理やったね。

Miz 乖離してたんだよね、全てがね。でもその中でも役者はそのキャラクターを全うしないといけないから、ものすごい熱演ですよ。でもどんどんその舞台の見た目と役者の心情が離れていって、こっちは置いてけぼり。「あー、なんか熱演してはるわー」って。

Sin だから、どんなに涙ながらにベネディクトさんが独白しようが、遠い世界に感じてしまうというか。

Miz そうやねぇ。

Sin 身に迫らない、シンパシーを感じれない。

Miz 共感できない。

Sin うん。そういう気がして。遠くの物語。

Miz ちょっとね、もう私たちの心が離れてるから(笑)。

Sin でも私ね、それでも頑張ってたのよ。

Miz 私も頑張ってたよ!

Podcast 第35回を文字起こし:【完全ネタバレ注意】ベネディクト・カンバーバッチ『HAMLET(ハムレット)』辛口レビュー(3)に続く→

Push7で更新情報を受け取る

人気記事ベスト10

Profile image
普段はジャパン演劇界の片隅で公演やイベントをプロデュースしたり、デザインしたり、パンを捏ねたり、色々手がける何でも屋さん。小さな頃から洋画が大好きで、ジャニーズアイドルには見向きもせずハリウッドスターを追いかける少女時代を送り、今に至る。『ロード・オブ・ザ・リング』が好き過ぎてNZを訪問したことをきっかけにロケ地巡りに目覚め、『SHERLOCK』のロケ地ロンドンを訪れて以来、英国の虜となる。今注目の俳優は、ヒュー・ジャックマン/ジェイク・ジレンホール/ジャック・ダヴェンポート/コリン・ファース/ベネディクト・カンバーバッチ/タロン・エジャトンなど。ただ今、ロンドンとの心理的距離を縮めるべく英会話を猛勉強中。
Profile image
「ハリウッド、なにそれおいしいの?」が合言葉で、ほんの数年前までは知ってる海外俳優はゲイリー・オールドマンとロバート・ダウニー・Jrだけと言ってもいいほど洋画に興味が無かったけれど、友人に誘われうっかり参加したNY旅行をきっかけに洋画沼にハマる。そうこうしているうちにロンドンの魅力に取り憑かれ、足掛け2年で近所のTSUTAYAの英映画ラインナップを制覇。今やAmazon.UKから次々と新作を輸入し楽しむ日々を送っている。今注目の俳優・監督は、ショーン・ハリス/エディ・マーサン/ロリー・キニア/ジュリアン・リンド=タット/トーマス・アルフレッドソン。ロンドン活動に勤しむ一方で、舞台女優の顔も持つ、マイペースで奔放な自由人。