妄想ロンドン会議

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英国男子の作り方? 美しい詩と歌に酔う『ヒストリーボーイズ(原題:The History Boys)』

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英国男子の作り方? 美しい詩と歌に酔う『ヒストリーボーイズ(原題:The History Boys)』
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英国人のイメージって…

歌と言葉を愛し、ちょっぴり悪戯好き?
学歴社会で厳格で、ほんのり意地悪?
やんちゃで紳士で、お茶目な人情家…?
知れば知るほど謎が深まる。
たぶん、それが英国人。

ストーリー
1983年、イングランド・シェフィールドのグラマースクールの進学クラスで学ぶ8人は、名門のオックスフォード大学やケンブリッジ大学を目指し学問に励んでいた。
学校の老教師ヘクターは彼らが人間として豊かな教養を身につけることを考え、歌や詩、演技などを使った個性的な授業を行っていた。しかし校長はオックスフォード大卒の若手教員アーウィンを招き、他の授業の時間を削減させ、アーウィンによる徹底した受験指導を行うようになる。

監督 ニコラス・ハイトナー
脚本 アラン・ベネット
原作 アラン・ベネット

キャスト
リチャード・グリフィス
スティーヴン・キャンベル・ムーア
フランシス・デ・ラ・トゥーア
サミュエル・アンダーソン
ジェームズ・コーデン
アンドリュー・ノット
ラッセル・トヴェイ
ジェイミー・パーカー
ドミニク・クーパー
サミュエル・バーネット

公開  2006年10月13日
上映時間  112分
製作国 イギリス

出典 Wikipedia

どうも。英国人になりたいSinです。

…すみません。
割と本気です。
なれるものならなってみたい。
そう思って理解しようと近づく程、どうにもするりとすり抜けていく…。
恋にも似た気持ちで追いかけるうちに出会った『ヒストリーボーイズ』。
この作品の中に、彼らを知る手がかりが隠されている気がするのです。

主人公は高校生たち!

『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』の父スタークでお馴染み、『マンマ・ミーア!』では歌声も披露されていたドミニク・クーパーさん。
『イントゥ・ザ・ウッズ』を始め、舞台や司会にも大人気のジェームズ・コーデンさん。
他にも『SHERLOCK バスカヴィルの犬』のラッセル・トヴェイさんや、舞台版『HARRY POTTER』の大人ハリーに決定されたジェイミー・パーカーさんも。
header
photo by IMDb

彼らを導き、共に思い悩む教師陣。

RSCで数々のシェイクスピア作品にご出演、『ハリー・ポッター』シリーズのバーノンおじさんも印象深いリチャード・グリフィスさん。
同じく『ハリー・ポッター』でマダム・マクシームを演じていらしたフランシス・デ・ラ・トゥーアさん。
スティーヴン・キャンベル・ムーアさんは『デビルクエスト』や『バンク・ジョブ』でも素敵でした…!
teacher
photo by IMDb

「英国版『ROOKIES』!?」…?

これ、この作品のDVDに書かれたキャッチコピーなんです。
が!
すみません。
主役が高校生というだけで、全然違うと思うのですよ。
日本のドラマ『ルーキーズ』は、熱くなればなる程面白くなるドラマでしたよね。
でもこちらはどこか常に醒めている。
高校生らしい成績や恋の悩みにも宗教観や人種的な差が見え隠れして、悩む自分を哲学的にシニカルに俯瞰している感じなのです。

これ!
この感じ!
私にとっての英国人、まさにこの感覚。

そして夢見る大人たち。

現実的である意味傍観者にも思える若者たちに対して、個性的な教師たちは自分の好きな学問に夢中なようで。
高校生の大問題である受験戦争を前に、より実践的な必勝法を求める生徒たちに対して、いかに自分の得意分野をぶっ込み授業時間を確保するかに必死なご様子。
むしろ、そちらの方が無邪気な子供のようにも見えてきます。
性の悩みに対しても、先生たちの方が自らを持て余し、対処しかねているかのよう。

泣いたり笑ったりと感情に忠実な大人たちに振り回されて当惑しながら、若者たちは本当は学問よりも夢見ることを学んでいるのかも知れません。

詩に歌に、映画に遊ぶ。

教師の一人、リチャード・グリフィスさん演じるヘクターの授業が一風変わっておりまして。
ひたすら詩を愛で暗唱し、歌で語り、映画の一場面を再現しては当てっこする。
生徒たちも、よりディープでコアなものを探してきては、息抜きがてら披露して楽しんでいるようです。
受験には関わりのない、人生の教養の時間。

オックスブリッジ(オックスフォード&ケンブリッジ大学)という英国最難関を目指すためには全く無駄にも思えるこの遊びのような学問を、新任の受験のエキスパートであるアーウィン(スティーヴン・キャンベル・ムーアさん)は武器に使えると考えます。
入試の質問官に聞かれた問いに、名文の引用を駆使して煙に巻く。
ならばもっと仕入れるべし、とさらに生き生きと詩や歴史に触れていく生徒たちの様子は、日本で私が見てきた受験の様子とは一味違うようです。
決して参考書丸写しではなく、図書館に通い、本を奪い合うようにして知識を吸収する。
あくまで能動的に、自分の気に入った言い回しを探して取り込み会話に応用してみる。

これも、引用好きな英国人っぽいですよね。
なんかっちゃあ指を2本くいくいっと曲げて、偉人の言葉を語り出す。
流行りのギャグをつい口にする、あの感覚で古典を語るなんて、小憎らしいほど粋じゃありませんか。
The History Boys
photo by theguardian.com

舞台から銀幕へ。

この映画のラスト、とある出来事があって教会へ集まった人々の会話のシーン。
ストーリーとは関係なく、少し不思議な感触で撮られています。
見た目も服装もそのままなのに、どうやら時間だけが10年以上経過したらしく、みんなのその後が回想として話される。
この、台詞だけで時間の経過を知らせる回想スタイル、あまり衣装替えのないお芝居などではよく見る手法ですが、映画で見ると少し違和感があるかもしれません。

『ヒストリーボーイズ』も、元はと言えば舞台作品。
2004年に初演を迎え、大好評のうちに即座に再演やツアーも行われたそうです。
そして、キャストもそのままに映画化され、公開したのが2006年。
なんとスピーディー!

このラストシーンも、ローレンス・オリビエ賞やトニー賞なども受賞した超話題作をロケーションこそ変えるものの、あとは舞台の息遣いそのままにスクリーンに再現しようという試みでしょうか。
結果として、この少しの違和感がまた注意を引き、静かなラストシーンを余韻の残るものにしています。
stage
photo bytelegraph.co.uk

んで、英国人って…

ちょっと斜に構えたような青春真っ盛り高校生たちが、歴史を紐解き引用しながら、恋と政治と宗教を同じ目線で議論する。
伝統校への憧れと、それに対する反発と。
悪しき風習とされながらも根強い縁故主義にも、チクリと針を刺す。
異性への愛、同性への恋に揺れ動くのは、先生も生徒も皆同じ。

単なる青春物と軽く見始めたこの作品には、どうやら英国の全てが宿っていたようです。
紅茶など頂きながら80年代珠玉のロックを楽しみ、最後のジャズの名曲『Bye Bye Blackbird』の美しいコーラスヴァージョンに辿り着く頃には、もしかしたらちょっぴり英国人に近づけるかもしれません…。
air
photo by IMDb

さて、次はどの作品の英国に遊びに参りましょうか。
皆様も、良き妄想旅を!

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普段はジャパン演劇界の片隅で公演やイベントをプロデュースしたり、デザインしたり、パンを捏ねたり、色々手がける何でも屋さん。小さな頃から洋画が大好きで、ジャニーズアイドルには見向きもせずハリウッドスターを追いかける少女時代を送り、今に至る。『ロード・オブ・ザ・リング』が好き過ぎてNZを訪問したことをきっかけにロケ地巡りに目覚め、『SHERLOCK』のロケ地ロンドンを訪れて以来、英国の虜となる。今注目の俳優は、ヒュー・ジャックマン/ジェイク・ジレンホール/ジャック・ダヴェンポート/コリン・ファース/ベネディクト・カンバーバッチ/タロン・エジャトンなど。ただ今、ロンドンとの心理的距離を縮めるべく英会話を猛勉強中。
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「ハリウッド、なにそれおいしいの?」が合言葉で、ほんの数年前までは知ってる海外俳優はゲイリー・オールドマンとロバート・ダウニー・Jrだけと言ってもいいほど洋画に興味が無かったけれど、友人に誘われうっかり参加したNY旅行をきっかけに洋画沼にハマる。そうこうしているうちにロンドンの魅力に取り憑かれ、足掛け2年で近所のTSUTAYAの英映画ラインナップを制覇。今やAmazon.UKから次々と新作を輸入し楽しむ日々を送っている。今注目の俳優・監督は、ショーン・ハリス/エディ・マーサン/ロリー・キニア/ジュリアン・リンド=タット/トーマス・アルフレッドソン。ロンドン活動に勤しむ一方で、舞台女優の顔も持つ、マイペースで奔放な自由人。